「デザイン」のためのリサーチ#9 紙と文字の植物性【後編】

vol.60 | 2023年4月2日

日本語のルーツとなる「漢字」は、中国古代の人物・蒼頡(そうけつ)が発明したと伝えられている。蒼頡は4つの目を持つという伝説があり、その鋭い観察眼を用いて動物の足跡を見れば、どんな動物かが推測できた。形から概念や意味を読み取ること──この原理を用いて蒼頡はさまざまな事物を意味する文字をつくることに成功した、と言われている。伝説はここまでとして、後編では漢字のはじまりと日本独自のかな、カタカナ文化、紙と文字の植物性についてリサーチを進める。

漢字のはじまり

現在私たちが目にすることのできる漢字の原初形態は、紀元前1300年前後に使用されていた「甲骨文字」である。名前の通り亀の甲羅や獣の骨に刻まれた文字を指すのだが、そのはじまりは卜占(ぼくせん)、つまり当時の占いだった。熱した炭を甲骨に当て、表面に現れたひび割れを読み解き吉凶を占う。卜占の終了後、日付・名前・内容などを書き記したものが甲骨文字とされる。文字の刻み方については諸説あるが、甲骨文字の出土地である殷墟(いんきょ)の周辺で、精巧な細工を施した彫刻刀が発見されたこと、また、甲骨文字の中に筆を意味する「聿」という字があったことから、ナイフで刻まれたものと、墨を使い筆で直接書かれたものの2種類があると考えられている。

漢字は甲骨文字から数えても3000年以上の一貫した歴史を持っている。古代中国に芽生えた文化の流れに沿って東アジア圏に伝播し、それぞれの国が文化創造の原動力としてきた。ひとつの文字が基本的な形を変えず、いまもなお幅広い地域で使用されているという事例は他に存在しないだろう。

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