雑誌ができるまで #13 デザインの過程①【無料版】
vol.38 | 2022年9月26日
vol.38 | 2022年9月26日
取材や撮影を一通り終え、デザイン作業のピークを迎えている。オフセット、オフセットにリソグラフ、リソグラフのみという印刷3工程別にデザインは考えられていく。その他に、写真がメイン、文章ベース、グラフィカルな実験ページなど、さまざまなデザイン階層が存在する。編集者がラフを切ることなく、デザイナーに一任されるグラフィック作業の過程を公開する。今回は写真がメインに使われるレイアウトについて。僕も初めて見るんです。
加納:巻頭はあまり詰め込まず、流れをつくりつつ選んでいきたいですね。扉ページを何種類かつくっているので、そこで使わなかった写真を本文に持ってきたいなと。
加藤:〈ENTER ENTER〉のエントランスの引きの写真を表紙(まだ未定)だとすると、特集ページの扉はIDEA Booksが良さそうだね。こう見ると横位置の写真が結構多い。写真のセレクトで意識したことはある?
加納:写真の数が多いので、流れをつくってあまり止めないようにというのは意識しました。流れを考えて枚数を絞ると、写真は割と役割で選ぶ形になってくる。例えば移動して、着いたとか説明的なシーンをつくる必要もある。あとはこの企画で34ページあるので、見開きをどこで効果的に使うかですね。写真としてはいいものがたくさんありますが、1枚で伝わるかを重視してセレクトしています。
加藤:1号のインド(タラブックスの取材ページ)のような切り抜きや絵の要素はなくて、写真でさっぱりとした印象にまとまっているね。被写体が全員キメキメじゃない感じがいい。THE ポートレートがないというか。
加納:写真は真正面を向いているものより、ライブ感がある方がNCの取材ページはいいと思います。加藤さんがIdea Booksの人に本を手渡している写真とかはあるので、ふざけた感じにしてもいいけど、流れとバランス的にどうかなと。あと単純に取材場所が4箇所あるので、34Pあっても企画ごとに割ける枚数が決まってくるんですよね。そこは場所と文章のウエイトで決めています。ブックフェアも写真はたくさんあるけど、あまり絵変わりがしないのでページ数は少なめにしています。NCを読んでいる人、会場の外の写真、NCのブースくらい。
加藤:いいと思う。もともとそんなたくさん入れるつもりじゃなかった。最後に会場の外の写真を持ってきてもいいかもね。テキストでは、コンセプトを英語で説明できなくて、外に出て一人でピザ食べながら川を見る、みたいな感じで書こうと思ってる(笑)
加納:〈ENTER ENTER〉はエントランスの写真がいいものがたくさんあるから、表紙以外のカットを本文で使うか考えたいです。そのあと内観がきて、その次が意外と難しいですね。流れで選んでいくと、ギャラリースペースと食事風景とアトリエでの作業風景。ロジャーは時間がなくて少ししか撮れなかったから選択肢が少なくて、ハンスはたくさん撮れたからいろいろ選べる。これを最初のたたきとして、写真も悩んだのがいっぱいあるので、テキストを待ちつつ詰めていきましょう。
加納:このページはサイケっぽい、ジャングルっぽさを出したいと思っています。オフ&リソのページなので、モニター画面上でつくるというよりは、リソで試し刷りをしながら進めてみたら結構面白い効果が見つけられました。これまでのコラージュ的な感じだけでなく、コントラストを強くディティールを過剰に押し出すと、少し変で気持ち悪い感じになったりとか。この黒はオフセットで印刷しますが、試し刷りではレーザーでプリントしているので、実際はもう少しリソとの差が出るかも。
加藤:このページ怪しくていいね。オフとリソのいわゆるNCの特徴が表れるページ。
加納:植物の写真がすごくよくて、きれいな写真も多かったですが、特殊な植物であることを強調したいので、よくある植物園みたいに見えちゃうともったいないので、できるだけ気持ち悪い造形のものを選びました。撮影時にもハウスの霧を最大にしてもらって、怪しい感じを出して……。
加藤:やっぱり現地に2人で見に行ったから臨場感や怪しさがわかる。だからレイアウトで思い切ったことができる。もらった写真ではこうは組めない。体感を伴ったデザインと身体性を使った印刷であって、単純な方法の融合じゃないんだよね。すでに刷るのが楽しみになっている。
……【無料版】はここまで。続きを読みたい方はコミュニティにご参加ください。
text: Naonori Katoh