特別連載&インタビュー #3 紙の値段はどう決まる?【無料版】
vol.21 | 2022年7月19日
vol.21 | 2022年7月19日
紙の値段がヤバい。紙の銘柄が選べない……編集者に会ってもグラフィックデザイナーと打合せしていても、必ず聞かれる老婆の呪いのような言葉。「カミガーーーー」では、いま紙はどういう状況なのか?ある人にこっそり聞いた、業界の裏側に(少しだけ)迫る!
加藤:紙がいま不足していると言われていますが、実際どうなんですか?グラフィックデザイナーからも編集者からもよく聞かれる悲鳴です。アドニスラフすらない!とか。
Aさん:枚数にもよりますけど、アドニスラフとかは普通にありますね。紙屋さんがストックしている分をいかに引き出せるかだと思います。少ないのは少ないので、「そこをなんとか頼むよ」と言える相手を確保するのが、印刷会社の営業や紙屋さんの営業の腕の見せ所だと思います。
加藤:結局、印刷所と紙屋さんとの人間関係で決まると。
Aさん:紙屋さんの力やルートによっても全然違います。
加藤:製紙工場から直で紙屋さんにいくのではなく、「問屋=代理店」があるんですか?
Aさん:そうですね。王子製紙とか日本製紙とか大手製紙メーカーの下に代理店があって、その代理店の下に卸業者があります。印刷屋がメーカーから直接仕入れることはほぼありません。
加藤:「代理店」とは本における取次みたいなものですか?
Aさん:大手製紙会社は子会社として代理店をやっています。いろんな大手製紙会社の用紙を仕入れられる代理店もあります。
加藤:メーカーから問屋に直接卸すことはないんですか?
Aさん:ないです。必ず代理店が挟まります。海外からの輸入もあるから、商社など代理店と並行に並んでいる会社もあります。
加藤:印刷所から見ると、代理店の下の問屋を取引先としていくつか持っていて、紙の手配をしていくということですか?
Aさん:そうですね。小さい会社から大きい会社まで、それぞれの強みがあります。当日に紙を届けられる。値段は少し高いが小規模な紙屋さんはかなり融通がききます。
加藤:出版社が印刷所を選ぶみたいな形で紙屋を選ぶんですね。
Aさん:大手の出版社は決まった紙を多めに仕入れます。定期的に発行される雑誌とか、漫画とかがいままではメインでしたので。その場合は出版社と代理店が直ということもたまにあると思います。代理店は小規模の紙を入れるのは嫌がると思いますね。
加藤:前に旅雑誌をやっている頃、大手出版社が版元でした。版元から販売委託という方法に変えたときに自社で印刷所も変えました。大手出版社は、印刷所も大手からしか選べず、すごく原価を圧迫していたんです。でも高いのは、印刷事故への保険だったり、紙の手配とか全部がつながっていて、業界全体の価格を下げないようにしているためだったんですね。そこはすばらしい考えだとは思いますが、原価を下げないと成立しない事情もありまして。紙業界も同じ構図で、一斉に価格を上げますよね。紙の値段を上げるというのは、メーカーが決めるんですか?
Aさん:そうだと思います。メーカーが決めたら誰も文句を言えない構造です。個人的には独占禁止法に引っかかるのではないかって思っていますけど……。
加藤:日本製紙のリリースによると8月1日の出荷分より印刷用紙は15%上がりますね。15パーて。しかも約半年前にも15%値上げしましたよね。事由はまるでコピペのようなものですが以下ですね。
——2021年11月公表の価格改定以降の世界情勢の激変に伴い、原燃料価格や物流経費は急騰の一途をたどり、加えて急激な円安が拍車をかける状況となっています。当社としても引き続きコスト削減等の対策をとっているものの、再生産可能なレベルには達しておらず、改めて価格改定をせざるを得ない、との判断に至りました——
メーカー側は「資材代や材料の高騰によって値上げをします」と通達をするんですか?
Aさん:都度都度、理由もたくさん書いてありますね。
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text: Naonori Katoh