雑誌ができるまで #8 ベルリン&アムステルダム日記④【無料版】

vol.19 | 2022年7月6日

ブックフェアに参加し、ヨーロッパのディストリビューターを訪ねるミッションは無事終わった。残るは旅の最終地点にして最重要な目的地。小規模なのに世界的な仕事を多く手掛けるパブリッシャー、Roma PublicationsとFw: Booksは、アムスのど真ん中、きらめく運河沿いにあった。その入り口は、地域を照らし、世界に開かれていた。

Enter Enterの入り口に立つ

加藤ついにPremiss・Roma Publications・Fw:Booksが共同で運営する本のプロジェクトスペース〈Enter Enter〉に行けたね。Fw:のハンス(・グレメン)とRomaのロジャー(・ウィレムス)に会った印象はどうだった?学生時代からの憧れの人だよね。

加納:予想通り優しい人ですね。彼らとオフィスをシェアしている日本のデザイナー・樋口(歩)さんもとてもいい人でした。オランダは本当にすばらしいデザイナーが多いですね。カレル(・マルテンス)がいて、その下にロジャーがいて、ハンスがいて。樋口さんは〈ヘリット・リートフェルト・アカデミー〉出身ですね。学校も含め縦横のつながりがちゃんとあります。みんな人柄がいいというか、全員偉大なデザイナーだけど気取ってなくて、偉そうだったり、業界人っぽかったりしない。ハンスとロジャーの関係をみてもわかりますよね。

加藤:とても気さくだったね。お互いが助け合っていると言っていたのも印象的だった。それは精神的なものが大きいと思う。デザイナーでも編集者でも最終的には一人で孤独に考えないといけないけど、都度意見を聞いたり、下らない話をしたりする時間がどれだけ貴重かよくわかった。いつもランチはみんなで食べているのもいいね。仕事環境も最高!運河で舟を眺めながらぼんやりしたり、運河の水をくんで花にやったりとかさ、まあスーパースターだし忙しいんだろうけど、こころにきちんと余白がある。きちんと自分で考える時間を取っている感じがした。

加納:ハンスが、だいたい9時-17時で働いていると言っていましたよね。コミッションワークとかもやっていると言っていたけど、いわゆる広告みたいにすごい直しが入ってみたいな世界ではなく、組織とか美術館、アーティスト、ギャラリーと共同してやっている感じ。すごく理想的でした。

加藤:コミッションワークをやりつつも、主な収入源はIdea Books(ディストリビューター)からの売上だと。これはちゃんとアートブックの市場がある証拠で、つくるものだけで成立している。あとは案件ごとに、自分のデザイン費を計算して払っているのが意外だった。自分でつくるものって原価を自分に乗せづらいじゃない?そこを明確にしているのはすごい。どこまでが事業の売り上げで、どこまでが自分に対するギャラなのかと。

加納:デザイナーにとってとても重要な事ですね。ハンスとロジャーそれぞれ仕事のアドバイスを話したりしているのもいいですよね。

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text: Naonori Katoh